夜蟻雑記

俳人・赤野四羽の俳句関連雑記。

句集『美濃白鳥(みのしろとり)』

尾州さんから第二句集『美濃白鳥』を頂きました。

藤尾さんは小川双々子の「地表」同人、双々子死去後は独自に作句を続けているとのことです。

表紙装画は双々子の油彩画作品。

季語を生かしつつも幻想的な景に発想が広がり、かすかに境涯がにじむ味わいがあります。双々子門下だけあってある種の聖性感覚があるように思います。

独りはさびしからだから寒卵

海市かな貝が舌出す遊びせり

木霊帰らず風花を手向けたり

在りし世へ天より釣瓶落しかな

なべて人煙となりき曼珠沙華

たてがみの芒のなかを走るかな

討死や打水の直ぐ乾きたり

不滅なりアメリカザリガニ土となる

うすらひの生成として不敵不敵し