「韻」同人の前野砥水さんの第一句集。著者より寄贈いただきました。
印刷所に回すデータをほとんどご自身で作製なさったとかで、格安で出版できたとのこと。
前野氏のブログはこちら。
タイトルの通り、生活の中の少し奇妙な瞬間、特別な印象をつかんだ句が魅力です。
唐辛子上げた腕が下げられぬ
大仏のまなこ細むる野焼きかな
舞茸や遍く四方掌を伸ばし
文庫本酒場の隅の余寒かな
貌のない通夜の人なみ木葉木菟
ギコギコと鯖缶開ける雪の夜
朝霧の木々に漂ふ人である
山椒の小鉢ひとつの夜長かな
砥ぎ水の錆の匂ひや冬支度
啓蟄の怪しい穴の雑貨店