夜蟻雑記

俳人・赤野四羽の俳句関連雑記。

現代俳句協会東海地区青年部主催、第3回JAZZ句会LIVE 御礼

 遅くなってしまいましたが、2019年11月2日、名古屋市今池のカフェ『あらたると』におきまして第3回JAZZ句会LIVEが開催されました。

 第1回、第2回はこちらです。

第一回名古屋JAZZ句会 - 夜蟻雑記

東海地区現代俳句協会 第二回JAZZ句会LIVE in 名古屋開催! - 夜蟻雑記

 基本的な形式はそのままですが、今回は当季雑詠にした点、朗読を増やした点が新たな試みになります。13時スタート、16時までの3時間の饗宴です。

 今回の参加者は15名。ミュージシャンはこれまでと同じ野道幸次(Ts)、武藤祐志(Gt)、大森菜々(Pf)、浅田亮太(Drs)の4名です。司会進行は今年「あるまだⅡ」を立ち上げた廣島佑亮さん。

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 今回のジャズ句会では、従来の一句ずつの演奏に加え、朗読パフォーマンスを6名に増やすという試みをやってみました。各賞受賞者がおられたことと、パフォーマンスとしての俳句という点をより掘ってみたいという狙いがあります。

 まずは、投句分をご紹介します。

椋鳥の撒き散らしたるターミナル   前野砥水

晩秋の硬貨を拾う洗濯屋       武馬夏希

十三夜月に入り江のあると言ふ      藤瀬ゆつき

卒塔婆小町っぽくならずに白秋      佐藤武

弾け飛ぶ笑顔の鼓動秋澄めり          おーさん

ゆけどゆけど茫々冬のノルマンディ 田中の小径

絡みあふ言葉よ音よ冬薔薇                 鈴木芝風

美ら秋のいやさかの夢首里炎上        永井江美子

風とゆく秋の都の女たち          武馬久仁裕

雨の月誰か来そうな曲かける             武馬夏希

杉玉掲ぐ新酒の祝唄                 村山恭子

あらたると来し方行方あらたなり       赤野四羽

 今回もミュージシャン勢は句にあわせて完全即興や、時にジャズスタンダード曲を交え、変幻自在な演奏を届けてくれました。

  この中で「おーさん」さんはカフェあらたるとの常連さんで、今回作句は初めてとのこと。ご友人のドラマーが亡くなられたということで、参加俳人の手ほどきを受けつつ、追悼の気持ちを詠みこまれました。ドラムの力強いリズムが秋の澄んだ空気を伝わり響き渡る、清澄でエネルギーに満ちた佳句だと思います。

 朗読作品は以下の6作。基本的に20句作品で、なつはづきさんは受賞作品ということで30句朗読しました。それぞれ4句ずつ抜粋してご紹介します。

「余白」            福林弘子

河豚の鰭はばたくやうに干しにけり

ヒトに問ふヒト科のことば春の塵

みづからの余白を探す木下闇

捥ぎたてのトマトのやうに笑ひけり

「風船売りの万華鏡」     松永みよこ

風船や触れずに抱く人のあり

手ごたえの欲しくて真夜の胡桃かな

白菜や剥がされてゆく楽しさに

凍星のことごとく君全部君

「青い空」        村山恭子

夜桜やみな善人にみえてくる

生きて行く真一文字につばくらめ

八月がくるあの青い空を連れ

猫じやらし叱り言葉に褒め言葉

「水の階段」     廣島佑亮

天体へ心の沈む残花かな

匂ひくる水の階段夏の月

明け易き死者の記憶を彫り刻む

愚かなる顔を月夜に遊ばしむ

「天国に積む」 赤野四羽

玉蜀黍捻じ込まれ不毛の聖域

人類終活みな柿の木にのぼる

海老芋や悪いところに皆集まる

朗らかな妾や挨拶はあそび

(なつはづき選)

「ぴったりの箱」なつはづき

ぴったりの箱が見つかる麦の秋

ゲルニカや水中花にも来る明日

鎖骨から透明になる冬の森

図書館は鯨を待っている呼吸

 今回のダイジェスト動画はこちら。

www.youtube.com

投句と朗読のバランス、また朗読の際のリズムや間のとり方など、いろいろと検討課題がみえつつも、今回も生の現場ならではの楽しいハプニングや出会いがありました。

これらの蓄積を活かしつつ、2020年5月頃に青年部では『現代俳句フェスティバル』を企画中です。

今後とも俳句を軸にユニークなイベントを仕掛けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

また個人的な話ですが、わたしは仕事の関係で東海から関東へ移動することとなりました。JAZZ句会はスターティングメンバーということもあり、できるだけサポートしていきたいと思いますが、なにより東海地区の皆さまのお力で今後も発展させていって頂ければ嬉しいです。